遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)を知っていますか?
- 6月26日
- 読了時間: 3分
家族歴がある方のための選択肢
― 遺伝子検査のメリットと注意点。将来の健康を守る「精密医療」の考え方 ―
はじめに
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、「BRCA1」または「BRCA2」という遺伝子に生まれつき変化があることで、乳がんや卵巣がんを発症しやすくなる体質のことです。
俳優のアンジェリーナ・ジョリー氏が、発症リスクを下げるための予防的手術を公表したことで、広く知られるようになりました。
「家族にがんの方が多いけれど、自分も検査を受けた方がよいのだろうか」と悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、最新の知見に基づく発症リスクや、予防的手術の効果、専門外来で受けられるサポートについて、遺伝専門医の視点から分かりやすく解説します。
●HBOCとはどのような体質でしょうか
HBOCは、細胞の損傷を修復する働きをもつBRCA1またはBRCA2遺伝子に、病的な変化(病的バリアント)があることで起こります。
この変化がある場合、一般の女性と比べて乳がんや卵巣がんを発症する生涯リスクが高くなることが知られています。
生涯発症リスクの目安
疾患 | 一般女性 | BRCA1変異 | BRCA2変異 |
乳がん | 約12% | 約60〜70% | 約45〜70% |
卵巣がん | 約1〜2% | 約40%前後 | 約10〜20% |
数字を見ると不安になるかもしれませんが、あらかじめリスクを知ることで、発症前から対策を講じたり、より早い段階で発見したりすることが可能になります。
●どのような場合にHBOCを疑うのでしょうか
乳がんのすべてが遺伝によるものではなく、遺伝性乳がんは全体の約5〜10%とされています。
ガイドラインでは、次のような家族歴がある場合に、遺伝カウンセリングや遺伝子検査の検討が勧められています。
40歳未満で乳がんを発症した方がいる
乳がんと卵巣がんの両方を発症した方がいる
両側の乳がんを発症した方がいる
男性乳がんの方がいる
血縁者に乳がん・卵巣がんの方が複数いる
●予防的手術(リスク低減手術)の効果
がんになる前に臓器を摘出する方法を「リスク低減手術」といいます。
研究では、次のような効果が示されています。
卵巣がん予防(卵巣・卵管切除)
卵巣がんの発症リスクを約80〜90%低下させると報告されています。
卵巣がんは早期発見が難しいため、有力な選択肢の一つとされています。
乳がん予防(乳房切除)
乳がんの発症リスクを約90%以上低下させるとされています。
一方で、手術には合併症や若年閉経などの影響もあります。
そのため、すべての方に勧められる治療ではなく、ライフプランや価値観を踏まえて慎重に検討されます。
●遺伝子検査のメリットと注意点
メリット
・乳がん検診を若い年齢から始められる
・マンモグラフィに加え、MRI検査などを併用できる
・将来がんを発症した場合に、治療薬の選択に役立つことがある
注意点
・結果を知ることによる心理的負担
・ご家族(子ども、兄弟姉妹など)への影響
・遺伝情報は一生変わらない情報であること
そのため、検査前には遺伝カウンセリングを受け、専門家と十分に話し合うことが重要です。
●専門外来で相談できること
「検査を受けるか決めていない」という段階でも相談できます。
専門外来では、
家系図の作成とリスク評価
検査費用や保険適用条件の説明
妊娠・出産への影響や家族への伝え方の相談
などを行います。
●結び:未来の選択肢を増やすために
HBOCは、不安を感じやすいテーマですが、自分の体質を知ることは将来の備えにつながります。
正しい情報をもとに選択肢を整理することで、がんによって人生の選択肢が狭まるリスクを減らすことができます。
もしご自身の家族歴に気になる点があれば、まずは専門外来で相談してみてください。
あなたとご家族の未来を守るための選択肢を、一緒に考えることができます。


