できもの・ニキビ
皮膚に生じる「できもの」には、ウイルス感染によるもの、加齢によるもの、体質によるものなど様々な原因があります。中には悪性腫瘍(皮膚がん)が隠れていることもあるため、自己判断で放置したり傷つけたりせず、まずは皮膚科医による正確な診断を受けることが重要です。
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診断や症状の程度により、当院での対応が難しい場合(入院や全身管理が必要な重症例など)は、適切な高次医療機関へ速やかにご紹介いたします。
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記載している内容は一般的な皮膚科診療の説明です。実際の診断・治療は、症状の種類、重症度、年齢、既往歴、妊娠・授乳の有無などを踏まえて、医師の診察のうえで個別に判断します。
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治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
いぼ(尋常性疣贅)
概論・症状
手や足の指、足の裏などにできやすい、表面がザラザラとした硬いドーム状の盛り上がりです。足の裏にできたものは魚の目(鶏眼)やタコ(胼胝)と間違えられることが多く、放置すると大きくなったり、周囲にうつって数が増えたりします。
原因
皮膚の目に見えない小さな傷口から、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが感染することで発症します。
検査と診断
視診のほか、ダーモスコピー(特殊な拡大鏡)を用いて病変部を観察し、特徴的な点状の血管(点状出血)を確認することで、魚の目などと正確に鑑別します。
治療
マイナス196℃の液体窒素を用いて、ウイルスが感染した異常な細胞を凍らせて壊す「凍結療法」が標準的な治療です。軽い痛みを伴う処置ですが、病変の部位や状態に応じて選択します。
最新知見・エビデンス
「尋常性疣贅診療ガイドライン 2019」では、液体窒素療法が主要な治療選択肢として推奨されています。角質が厚い足の裏などは1回の治療でウイルスを完全に排除することが難しいため、1-2週間に1回の頻度で根気よく治療を続けることが推奨されます。
水いぼ(伝染性軟属腫)
概論・症状
表面がツヤツヤとして光沢があり、中央が少しへこんだ1-5mmほどの小さな盛り上がりです。主に小児の体幹(胸や背中)や手足、わきの下などに多発します。
原因
伝染性軟属腫ウイルスの感染が原因です。プールでのビート板やタオルの共用、皮膚同士の直接の接触などでうつります。アトピー性皮膚炎や乾燥肌などで皮膚のバリア機能が低下していると、かきむしった手などを介して一気に広がりやすくなります。
検査と診断
特徴的な見た目(光沢のある丘疹と中央のへこみ)から、医師の視診で容易に診断可能です。
治療
免疫がつくことで半年-数年で自然治癒することもありますが、保育園やプールでの集団生活への影響や、広がるのを防ぐ目的から、ピンセットで一つずつ内容物の白い芯をつまみ取る「摘除内容物圧出法」を行うのが確実です。痛みを和らげるため、事前に局所 麻酔のテープ(ペンレステープ等)を貼ってから処置を行うことも可能です。
加齢性いぼ(脂漏性角化症)
概論・症状
顔や頭、首、体幹などによくみられる、茶色から黒色の少しザラザラと盛り上がった良性の腫瘍です。いわゆる「老人性いぼ」とも呼ばれ、最初は平らなシミだったものが次第に盛り上がってくることもあります。
原因
加齢や、長年にわたる紫外線ダメージの蓄積が主な原因です。
検査と診断
視診とダーモスコピー検査を行います。特に色が黒く不整なものは、悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞癌などの悪性腫瘍(皮膚がん)ではないことを正確に見極めることが非常に重要です。
治療
良性疾患のため必ずしも治療の必要はありませんが、見た目が気になる場合や、洗顔や着替えの際に服に引っかかって痛い・出血するといった場合は治療の対象となります。保険診療では、液体窒素を用いた凍結療法で取り除きます。
首周りのぷつぷつ(アクロコルドン・軟性線維腫)
概論・症状
首やわきの下、胸元などに多発しやすい、肌色から褐色の小さく柔らかい突起物(スキンタッグ)です。
原因
衣服やネックレスなどによる日常的な「皮膚の摩擦」や老化、体質などが関係していると考えられています。肥満傾向の方や、更年期以降の女性にやや多く見られます。
検査と診断
視診で診断可能です。ウイルス性のいぼとは異なるため、他人にうつることはありません。
治療
根本が細く飛び出しているものは、医療用の専用ハサミ(眼科剪刀)で根元からチョキンと切り取る処置が簡便で、痛みも一瞬であり跡も残りにくいため選択されることが多い方法です。根元が太いものや広範囲に多発しているものは、液体窒素による凍結療法を行うこともあります。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
概論・症状
目の周りや頬などにできる、直径1~2mmほどの白く硬い真珠のような小さな粒です。
原因
皮膚のごく浅い部分に、古い角質や産毛などが袋状にたまることで生じます。体質的にできやすい方のほか、すり傷などが治る過程で二次的にできることもあります。
検査と診断
特徴的な白く透けた球状の見た目から視診で診断します。白ニキビや、汗管腫(目の周りにできる別の良性腫瘍)との鑑別を行います。
治療
細い注射針の 先端で表面の皮膚にごくわずかな穴を開け、中身の白い角質の塊を押し出します。処置はそれほど時間がかからず、傷跡も数日でほとんどわからなくなります。
ケロイド・肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)
概論・症状
手術の跡や怪我、火傷、ニキビの跡などが、赤くミミズ腫れのように盛り上がり、硬くなる状態です。強いかゆみや引きつれ感(ひきつり)、チクチクとした痛みを伴うことがあります。
原因
傷が治る過程で、コラーゲンなどの線維組織が異常に過剰生産されることが原因です。特に「ケロイド」は体質(遺伝的素因)が強く関与し、元の傷の範囲を超えてカニの足のように周囲の正常な皮膚へと拡大していく厄介な特徴があります。胸の谷間(前胸部)、肩、下腹部、耳たぶ(ピアスの穴開け後)などにできやすい傾向があります。
検査と診断
問診(外傷や手術の歴)と視診、触診で診断します。経過や広がり方から、元の傷の範囲内に留まる「肥厚性瘢痕」と、周囲に拡大する「ケロイド」を区別します。
治療
外用治療として、強いステロイドを含有するテープ剤(エクラープラスター®、ドレニゾンテープ®)を病変部の大きさにぴったり合わせて切り、貼り続けます。盛り上がりや硬さが強い場合は、ステロイドの局所注射(ケナコルト注®)を数週間おきに直接患部に打ち込みます。補助的に、抗アレルギー薬(トラニラスト[リザベン®])の内服も有効です。
最新知見・エビデンス
「ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018」に基づき、成人における保存的治療の第一選択としては、十分な強さのステロイドテープ剤の使用が推奨されています。治療には長期間(数ヶ月~数年単位)を要することが多いため、根気強い継続が必要です。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
概論・症状
毛穴に皮脂や角質が詰まった「白ニキビ(面皰)」から始まり、そこに細菌が繁殖して炎症を起こすと「赤ニキビ(紅色丘疹)」や膿を持った「黄ニキビ(膿疱)」へ進行します。重症化すると皮膚の深い部分にしこり(硬結)ができ、一生消えないクレーター状の瘢痕(ニキビ跡)を残すことがあるため、早期治療が極めて重要です。
原因
男性ホルモンなどの影響による「皮脂の過剰分泌」、毛穴の出口が硬く詰まる「角化異常」、および毛穴の奥での「アクネ菌などの微生物の増殖」の3つが複雑に絡み合って発症・悪化します。
検査と診断
医師の視診により、皮疹の種類と顔全体にある数を数えて重症度を判定します。大人ニキビの場合は、毛包炎や酒さ(赤ら顔)といった別の疾患が混ざっていないか鑑別します。
治療
毛穴の詰まりを根本から改善する「アダパレン(ディフェリン®)」や、抗菌・ピーリング作用を持つ「過酸化ベンゾイル(ベピオ®)」の外用薬、あるいはそれらの配合剤(エピデュオなど)を用いた治療が現在の基本です。赤く腫れたニキビが多い時期には、抗菌薬の飲み薬(ドキシサイクリン®、ミノサイクリン®等)や塗り薬(クリンダマイシン®、ゼビアックス®等)を一時的に併用して一気に炎症を鎮めます。
最新知見・エビデンス
「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」では、急性炎症期と維持期を意識した治療が推奨され、抗菌薬は漫然と長期継続しないことが重要とされています。抗菌薬(化膿止め)を漫然と使い続けると薬が効かない「耐性菌」を生み出してしまうため、維持期には抗菌薬を使用せず、過酸化ベンゾイルやアダパレンなどの毛穴の詰まりをとる外用薬のみでコントロールを続けることが強く推奨されています。


