痛みを伴う疾患
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診断や症状の程度により、当院での対応が難しい場合(入院や全身管理が必要な重症例など)は、適切な高次医療機関へ速やかにご紹介いたします。
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記載している内容は一般的な皮膚科診療の説明です。実際の診断・治療は、症状の種類、重症度、年齢、既往歴、妊娠・授乳の有無などを踏まえて、医師の診察のうえで個別に判断します。
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治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
単純ヘルペス
概論・症状
唇の周り(口唇ヘルペス)や陰部(性器ヘルペス)などに、ピリピリ・チクチクとした違和感や痛みが現れた後、小さな水ぶくれが複数集まってできる疾患です。
原因
単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染が原因です。一度感染するとウイルスは体内の神経節に潜伏し、疲労、ストレス、発熱、紫外線などをきっかけに免疫力が低下した際に再活性化して症状を繰り返します。
検査と診断
特徴的な水ぶくれの視診で診断します。非典型的な場合は、迅速検査キットや細胞診を用いてウイルスを確認します。
治療
ウイルスの増殖を抑え る「抗ウイルス薬」の内服(バラシクロビル[バルトレックス®]、ファムシクロビル[ファムビル®]など)または外用(アラセナA軟膏®など)を行います。早期に治療を開始するほど早く治癒します。
最新知見・エビデンス
年に何度も再発を繰り返す方に対し、あらかじめ内服薬を処方しておき、ピリピリとした初期症状(前駆症状)が出た時点ですぐに患者さん自身の判断で内服を開始する「PIT(Patient Initiated Therapy):あらかじめ処方された薬を初期症状発現時に内服する治療法」が保険適用となり、重症化を防ぐ有効な手段として推奨されています。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
概論・症状
体の左右どちらか一方の神経に沿って、刺すような強い痛みと赤い斑点、水ぶくれが帯状に現れる病気です。皮膚症状が治まった後も痛みが長期間残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」に移行することがあり、注意が必要です。
原因
子どもの頃に感染した水ぼうそう(水痘)のウイルスが原因です。治った後もウイルスは体内に潜伏しており、加齢や疲労で免疫力が低下した際に再び暴れ出すことで発症します。
検査と診断
特徴的な皮疹の分布から視診で診断します。判別が難しい初期の場合は、迅速検査キットを使用することもあります。
治療
抗ウイルス薬の内服を、可能な限り早期(一般に発疹出現から72時間以内を目安)に開始することが後遺症を防ぐ鍵となります。
最新知見・エビデンス
帯状疱疹は年齢とともに発症頻度が上がることが知られ、一般に生涯で約3人に1人が発症するとされています。50代を境に発症率が急激に増加するため、中高年の方は特に早期受診と、予防のためのワクチン接種(自費)が推奨されます。
しもやけ(凍瘡)
概論・症状
手足の指先、耳たぶ、鼻の頭などが赤紫色に腫れ上がり、ムズムズとしたかゆみやジンジンとした痛みを生じます。特に入浴時など、温まるとかゆみが強くなるのが特徴です。
原因
寒冷刺激によって自律神経の働きが乱れ、手足の末梢血管の血行不良が起こることで発症します。一日の気温差が10度以上になる初冬や早春に多くみられます。
検査と診断
視診と問診で診断します。大人の重症な「しもやけ」の場合は、膠原病などの全身性疾患が隠れていないか血液検査等で確認することがあります。
治療
血行を改善するビタミンE内服薬(ユベラ®等)や、ヘパリン類似物質(ヒルドイド®等)、ビタミンE含有の外用薬を使用します。日常的な保温とマッサージも重要です。
やけど・日焼け(熱傷)
概論・症状
熱湯、油、アイロン、湯たんぽ(低温やけど)、または過度な紫外線(日焼け)によって生じる皮膚の損傷です。深さによってI度(赤み・ ヒリヒリ)、II度(水ぶくれ・強い痛み)、III度(白や黒に変色・神経まで損傷しているため痛みを感じない)に分類されます。
原因
高温の物質との接触や、紫外線B波(UVB)による組織のダメージです。特に湯たんぽなどによる「低温やけど」は、見た目以上にダメージが深く達していることが多く注意が必要です。
検査と診断
視診により、熱傷の深さ(深度)と面積から重症度を判定します。
治療
受診前に「すぐに流水で15〜30分程度冷やすこと」が最も重要です。熱傷の重症度に応じて治療方針を決めます。浅い熱傷では創部保護と適切な被覆材を用いた治療を行い、感染兆候や深達度を評価しながら経過をみます。
炎症性粉瘤
概論・症状
皮膚の下にできた垢や皮脂のたまる袋(粉瘤)に、細菌が感染したり袋が破れたりして強い炎症を起こした状態です。赤く腫れ上がり、ズキズキとした激しい痛みを伴い、時に悪臭のあるドロドロとした膿が出ます。
原因
粉瘤自体は体質などで誰にでもできますが、疲労やストレスによる免疫力低下、あるいは無意識に触ったり潰そうとしたりする物理的刺激が引き金となって炎症を起こします。
検査と診断
視診・触診、必要に応じて超音波検査で袋の大きさと炎症の程度を確認します。
治療
赤く腫れて痛みが強い急性期は、局所麻酔をして皮膚を少し切開し、中に溜まった膿を外に出す処置(切開排膿)と、抗菌薬(セフェム系など)の内服を行います。炎症が落ち着いた後に、原因である袋ごと取り除く根治手術をご提案します。
化膿・皮膚感染症(とびひ、蜂窩織炎など)
概論・症状
●伝染性膿痂疹(とびひ)
主に小児に多く、虫刺されやあせもを掻きむしった傷から細菌が入り、水ぶくれや黄色いかさぶたが全身に「飛び火」するように広がります。
●蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮膚の深い部分(真皮から皮下脂肪)に細菌が感染し、広い範囲が赤く硬く腫れ上がり、熱感と強い痛みを伴います。発熱や悪寒を伴うこともあります。
治療
原因菌(黄色ブドウ球菌や溶連菌)に効果のある抗菌薬の内服(セフェム系、ペニシリン系など)と、抗菌薬入り軟膏(フシジンレオ軟膏、アクアチム軟膏など)の外用による治療が基本です。蜂窩織炎で高熱があるなど重症の場合は、点滴治療や入院加療が可能な病院へ速やかにご紹介します。


