かゆみを伴う疾患
皮膚の表面に炎症が起き、赤み、ブツブツ、水ぶくれ、カサつき、じゅくじゅくなどの変化が生じる状態の総称です。強いかゆみを伴うことが多く、掻きむしることでさらに悪化する悪循環に陥りやすくなります。
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診断や症状の程度により、当院での対応が難しい場合(入院や全身管理が必要な重症例など)は、適切な高次医療機関へ速やかにご紹介いたします。
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記載している内容は一般的な皮膚科診療の説明です。実際の診断・治療は、症状の種類、重症度、年齢、既往歴、妊娠・授乳の有無などを踏まえて、医師の診察のうえで個別に判断します。
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治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
湿疹・皮膚炎
概論・症状
皮膚の表面に炎症が起き、赤み、ブツブツ、水ぶくれ、カサつき、じゅくじゅくなどの変化が生じる状態の総称です。強いかゆみを伴うことが多く、掻きむしることでさらに悪化する悪循環に陥りやすくなります。
原因
乾燥、汗、衣類による摩擦、洗いすぎなどの「物理的刺激」や、体調不良、ストレスなどの「内的要因」が複雑に絡み合って発症します。
検査と診断
医師による視診で皮疹の状態を確認し、問診で悪化因子を探ります。真菌(カビ)の感染など、他の疾患が疑われる場合は顕微鏡検査などで鑑別します。
治療
炎症の程度に合わせて 適切な強さのステロイド外用薬(アンテベート®、ロコイドなど)を選択し、短期間でしっかり炎症を鎮めます。同時に、ヘパリン類似物質製剤(ヒルドイド®など)やワセリンを用いて皮膚を保護・保湿します。
最新知見・エビデンス
湿疹の治療では「塗る量(FTU:フィンガーチップユニット)」が非常に重要です。人差し指の先端から第一関節までチューブから出した量(1 FTU、約0.5g)で、成人の手のひら約2枚分(指を含む)の面積に塗るのが目安であり、当院では患者さんに合わせて外用指導を行っています。
かぶれ(接触皮膚炎)
概論・症状
特定の物質が皮膚に触れることで、その接触した部位に 一致して赤み、腫れ、水ぶくれ、強いかゆみが生じる疾患です。
原因
誰の皮膚にもダメージを与える「刺激性(強い洗剤、酸、アルカリ、石鹸など)」と、特定の体質の人にのみアレルギー反応として起こる「アレルギー性(金属、化粧品、毛染め液、植物、湿布薬など)」の2種類があります。
検査と診断
問診で「いつ・体のどこに・何に触れたか」を詳しく伺うことが診断の鍵となります。
治療
原因物質を特定し、その物質との「可能な範囲で接触を避けること」が根本的な治療です。生じている症状に対しては、ステロイド外用薬を塗布し、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬を内服します。
アトピー性皮膚炎
概論・症状
かゆみを伴う慢性的な湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。顔や首、肘・膝の裏などに左右対称に現れやすい特徴があります。
原因
皮膚の水分を保ち刺激から守る「バリア機能」の低下と、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)が組み合わさることで発症します。
検査と診断
特徴的な皮疹の分布と、長期間(大人は6ヶ月以上、乳幼児は2ヶ月以上)続く反復性の経過から診断します。必要に応じて血液検査(TARC、総IgEなど)を行い、炎症の程度や病勢評価の参考にします。
治療
保湿剤によるスキンケアを土台とし、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏(プロトピッ ク®)で炎症を抑えるのが基本です。近年は、非ステロイド性の新しい外用薬(デルゴシチニブ軟膏[コレクチム®]、ジファミラスト軟膏[モイゼルト®])も登場しました。既存治療で改善しない中等症-重症の方には、かゆみや炎症の元を直接ブロックする注射薬(デュピルマブ[デュピクセント®]など)も検討します。
最新知見・エビデンス
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」でも、再燃を繰り返す部位に対するプロアクティブ療法(寛解後も間欠的に抗炎症外用薬を継続し再燃予防を図る方法)が重要な選択肢として示されています。
結節性痒疹(けっせつせいようしん)
概論・症状
手 足や体幹に、強いかゆみを伴う硬いイボ状のしこり(結節)が多発する疾患です。かゆみが非常に強いため無意識に掻きむしってしまい、さらに悪化して長引く傾向があります。
原因
虫刺されや湿疹などをきっかけに掻破(掻きむしること)を繰り返すことで、皮膚の神経が過敏になり、しこりが形成されると考えられていますが、根本的な原因は詳細不明な部分もあります。
検査と診断
特徴的な硬いしこりの視診・触診で診断します。背景に内臓疾患(腎臓や肝臓の病気)などが隠れていないか、血液検査で確認することがあります。
治療
非常に強いステロイド外用薬や、ステロイド含有のテープ剤(エクラープラスター®、ドレニゾンテープ®)をしこりに直接貼り付けます。かゆみを抑えるため抗ヒスタミン薬を内服します。
最新知見・エビデンス
近年、結節性痒疹のかゆみの原因物質(IL-31)を直接ブロックする注射薬「ネモリズマブ(ミチーガ)」やIL-4,13をブロックする注射薬「デュピルマブ(デュピクセント®)」が保険適用となり、これまで難治だった患者さんの症状や生活の質(QOL)の改善が期待できる場合があります。
蕁麻疹(じんましん)
概論・症状
突然、蚊に刺されたような赤い膨らみ(膨疹)が現れ、強いかゆみを伴います。数十分から数時間(長くても24時間以内)で跡形もなく消えるのが特徴です。
原因
特定の食べ物(サバ、エビなど)や薬、物理的刺激(寒冷、日光、圧迫)が原因となることもありますが、原因が特定できない「特発性蕁麻疹」が多くであり、ストレスや疲労が背景にあるとされています。詳細不明なことも多い疾患です。
検査と診断
皮疹が出現して消えるまでの時間や、きっかけの有無を問診します。特定の原因が疑われる場合のみ、アレルギー血液検査を行います(原因不明の特発性では血液検査の意義は低いです)。
治療
ヒスタミンの働きを抑える「第2世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン[アレグラ®]、オロパタジン[アレロック®]など)」の内服が第一選択です。
口唇炎(こうしんえん)
概論・症状
唇の激しい乾燥、皮むけ、ひび割れ、赤み、ヒリヒリ感などが生じる状態です。
原因
唇をなめる癖、乾燥した空気、リップクリームや口紅の成分に対するかぶれ(接触皮膚炎)、香辛料の刺激などが原因となります。
検査と診断
使用している化粧品等の問診と視診を行います。
治療
原因となる習慣(なめる癖など)や化粧品の使用を中止します。白色ワセリンでしっかりと保湿・保護し、炎症が強い場合は唇にも使用されることのある比較的弱いステロイド外用薬を、必要に応じて短期間使用します。
補足
口紅に含まれるコチニール色素(カルミン酸)という赤色の色素によるアレルギーで口唇が荒れたり腫れたりすることがあり、場合によってはアナフィラキシーなど重症の症状が出ることもあります。 赤色のアイシャドウ、口紅、チークなど使用後に皮膚症状が出る場合はコチニール色素アレルギーの可能性がありますので思い当たることがある場合はお気軽にご相談ください。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
概論・症状
頭皮、髪の生え際、眉間、鼻の脇、耳の後ろなど、皮脂の分泌が多い部位(脂漏部位)に、赤みや黄色っぽいフケのようなカサつきが生じる疾患です。
原因
皮膚の常在菌である「マラセチア(カビの一種)」が皮脂を分解する際に生じる物質が、皮膚に炎症を引き起こすことが主な原因です。睡眠不足やストレスなどで悪化しやすいとされます。
検査と診断
特徴的な部位の視診で診断します。頭部の場合は、乾癬や白癬(水虫菌)との鑑別が必要になることがあります。
治療
原因菌の増殖を抑える「抗真菌薬の外用(ニゾラール®など)」が基本です。赤みやかゆみが強い場合は、弱いステロイド外用薬を併用して炎症を素早く鎮めます。
最新知見・エビデンス
再発しやすいため、症状が良くなっても抗真菌薬の外用をスキンケア感覚で継続することや、抗真菌成分(ミコナゾール等)配合の市販シャンプー(コラージュフルフルなど)を使用することが予防に有効です。
乾燥肌(皮脂欠乏性湿疹)
概論・症状
皮膚の水分や皮脂が減少し、粉をふいたようにカサカサになる状態です。乾燥が進行するとバリア機能が壊れ、強いかゆみや赤みを伴う湿疹(皮脂欠乏性湿疹)に進行します。スネや太もも、腰回りに多くみられます。
原因
加齢による皮脂分泌の低下、空気の乾燥(冬場)、熱いお風呂への長時間の入浴、ナイロンタオルによるゴシゴシ洗いなどが原因です。
検査と診断
視診により、皮膚の乾燥具合や亀裂、湿疹の有無を確認します。
治療
ヘパリン類似物質(ヒルドイド®など)や尿素製剤などの保湿剤をたっぷり塗布します。すでに湿疹化して赤みやかゆみがある場合は、ステロイド外用薬を併用します。
最新知見・エビデンス
入浴時は「ぬるめのお湯(38~40度)」に浸かり、体 を洗う際は「石鹸をよく泡立てて手で優しく洗う」こと、そして入浴後はできるだけ早め(目安として数分-10分程度)に保湿することが勧められます。
アレルギー全般・薬疹
概論・症状
特定の食物や花粉、ダニ、または服用した薬(薬疹)に対する過剰な免疫反応により、皮膚に蕁麻疹や発疹、かゆみが生じる状態です。薬疹の場合は、重症化すると全身の皮膚が剥がれるなど命に関わることもあります。
原因
体質的にアレルゲンに反応しやすいことや、新しく飲み始めた薬(特に抗生物質や解熱鎮痛薬)が原因となります。
検査と診断
問診・血液検査(特異的IgE抗体検査:View39など)でアレルゲンを調べます。薬疹が疑われる場合は、被疑薬の開始時期や経過を詳細に確認します。
治療
アレルゲンの回避と、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の内服を行います。薬疹の場合は「疑わしい薬を直ちに中止」し、必要に応じて全身的なステロイド治療を行います。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
概論・症状
少し盛り上がった赤い斑点(紅斑)の上に、銀白色のフケのようなカサカサ(鱗屑)が厚く付着し、ポロポロとはがれ落ちる慢性の皮膚疾患です。頭皮、肘、膝、お尻などにできやすく、爪の変形や関節の痛みを伴うこともあります。
原因
免疫の異常(TNF-α、IL-17、IL-23などのサイトカインの過剰産生)により、皮膚の細胞が通常より著しく速い速度で入れ替わってしまうことが原因です。
検査と診断
特徴的な皮疹の視診で診断します。カサカサを無理にはがすと点状に出血する現象(Auspitz現象)を確認します。
治療
皮膚の増殖を抑える「ビタミンD3外用薬」と、炎症を抑える「ステロイド外用薬」の配合剤(ドボベット®、マーデュオックス®など)による治療が基本です。
最新知見・エビデンス
「乾癬診療ガイドライン」に基づき、外用薬で効果が不十分な場合は、内服薬(オテズラ®など)を追加します。近年は、原因物質をピンポイントで抑える「生物学的製剤(注射薬)」が多数登場しているので、病型や重症度に応じて皮疹の大幅な改善を目指します。高次医療機関へ紹介し、こうした生物製剤を導入することもあります。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
概論・症状
手のひらや足の裏に、かゆみを伴う小さな水ぶくれができ、それが次第に黄色い膿を持ったブツブツ(無菌性膿疱)に変化し、カサカサになって皮がむける病気です。これを慢性的に繰り返します。胸の骨(胸鎖関節)の激痛を合併することがあります。
原因
喫煙(喫煙との関連が強く示されています)や、扁桃腺の慢性的な炎症(病巣感染)、歯科金属アレルギーなどが悪化の引き金になると考えられています。
検査と診断
視診に加え、手足の膿から細菌や真菌(水虫)が検出されないこと(無菌性)を確認して診断します。
治療
強力なステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を塗布します。禁煙指導や、原因となる病巣感染(扁桃炎や虫歯)の治療を他科と連携して行います。難治例は高次医療機関へ紹介し紫外線療法や、生物学的製剤(グセルクマブ[トレムフィア]など)の注射治療を検討します。


