40代からの「卵巣がん検診」は必要?
- 18 時間前
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婦人科医が教えるエコー検査の限界と意義
― 自覚症状が出にくいサイレントキラーを防ぐための、定期的なチェックポイント ―
はじめに
卵巣がんは初期にはほとんど症状が現れないことから、「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれることもある婦人科がんです。
子宮頸がんのように自治体で行われる住民検診の制度が確立されていないため、「40代になったら卵巣も調べたほうがよいのだろうか」と迷われる方も少なくありません。
本記事では、婦人科専門医の立場から、卵巣がんの発症頻度や特徴、超音波(エコー)検査で分かることと限界、腫瘍マーカー検査、さらに近年注目されている尿検査(マイシグナル)について、公的ガイドラインに基づいた正しい位置づけを分かりやすく解説します。
卵巣がんの現状と40代女性のリスク
日本では、卵巣がんと新たに診断される方は年間およそ13,600人、亡くなる方は年間およそ4,900人と報告されています。
発症のピークは50代後半から60代ですが、40代に入ると徐々に増え始めます。
卵巣がんの特徴の一つに、他の婦人科がんと比べて生存率が低めである点が挙げられます。
生存率の現状
全体の5年相対生存率は約60%で、子宮頸がん(約76%)、子宮体がん(約81%)と比べると低い傾向があります。
進行した状態での発見
診断時にすでにIII期・IV期といった進行した段階で見つかる方が、全体の約60%を占めています。
こうした背景から、卵巣がんは「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。
なぜ子宮頸がん検診だけでは不十分なのでしょうか
多くの方が定期的に受けている子宮頸がん検診は、子宮の入り口(頸部)の細胞を調べる検査です。
卵巣は子宮の左右にあり、骨盤の奥深い位置に存在しています。
そのため、子宮頸がん検診を受けていても、卵巣の状態までは評価できません。
検診結果が「異常なし」であっても、卵巣の健康が保証されるわけではない点を知っておくことが大切です。
超音波(エコー)検査で分かることと限界
卵巣の状態を調べる代表的な方法が、経腟超音波(エコー)検査です。
この検査では、次のような点を確認できます。
卵巣の大きさや形
液体がたまった「嚢胞(のうほう)」の有無
固形部分(充実性腫瘤)や腹水の有無
痛みが少なく、放射線被ばくの心配もありません。
一方で、初期の卵巣がんでは見た目に大きな変化が現れないことも多く、エコー検査だけで早期がんを確実に見つけることは難しいのが現状です。
日本産科婦人科学会でも、一般の女性を対象とした卵巣がんの一斉検診としての有効性は、現時点では確立されていないとされています。
腫瘍マーカー検査(CA125・HE4)の位置づけ
血液検査で調べる腫瘍マーカー(CA125など)は、卵巣がんで上昇することがあります。
しかし、子宮内膜症や月経、子宮筋腫といった良性疾患でも数値が高くなることがあります。
そのため、症状のない方に対して、この検査だけでがんの有無を判断する方法は推奨されていません。
あくまで、画像検査などと組み合わせて評価する補助的な検査と位置づけられています。
新しい選択肢「尿検査(マイシグナル)」への期待
近年、尿中のマイクロRNAを解析する「マイシグナル(MiSignal)」という検査が登場しました。
従来の検査では難しかった早期リスク評価を補助する新しい方法として注目されています。
ただし、現時点では「がんを確定診断する検査」ではなく、自分自身のリスクを知るための補助的なツールです。
最終的な判断には、医師による診察や他の検査結果を踏まえた総合的な評価が必要となります。
40代の私たちができること
卵巣がんは早期発見が難しい病気ですが、日頃から意識できるポイントがあります。
定期的な併用検診
婦人科受診時に、必要に応じて超音波検査を併用する
家族歴の確認
乳がん・卵巣がんの家族歴がある場合は、遺伝的背景も考慮
症状を軽視しない
腹部の張り、違和感、頻尿などが数週間続く場合は早めに受診
結び:納得のいく健康管理のために
「サイレントキラー」という言葉は不安を感じさせるかもしれませんが、正しい知識を持つことが自分の体を守る第一歩です。
一つの検査結果だけで一喜一憂するのではなく、それぞれの検査の役割と限界を理解し、かかりつけの婦人科医と相談しながら健康管理を続けていくことが大切です。
それが、40代からの健やかな毎日を支える、最も現実的で確かな方法といえるでしょう。


