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宗田聡のやさしい産婦人科ブログ

PMS(月経前症候群)は「性格のせい」ではありません

  • 2月27日
  • 読了時間: 4分

職場の人間関係やキャリアを守るためのホルモン・コントロール術

生理前のイライラ・落ち込みに振り回されないために。専門医が教える最新治療とセルフケアの正解


はじめに

「生理前になると、なぜか同僚の些細な言動にイライラしてしまう」

「普段なら流せるミスに強く反応してしまい、後で自己嫌悪に陥る」


このような悩みを抱えている働く女性は、決して少なくありません。しかし、これは性格や努力不足の問題ではなく、**月経前症候群(PMS)や、より精神症状の強い月経前不快気分障害(PMDD)**といった、医学的なケアの対象となる状態である可能性があります。


産業医として多くの働く女性と面談する中で、PMSによるパフォーマンス低下や人間関係の悪化が、キャリアに影響しているケースも経験します。

しかし、適切な治療や生活習慣の調整によって、こうした症状は多くの方で軽減が期待できます。


本記事では、医学的根拠に基づき、PMSの頻度や原因、治療法、メンタル疾患との見分け方、セルフケアについて解説します。


1.PMSの背景と頻度:あなたは一人ではありません

PMS(月経前症候群)とは、月経前の3〜10日間に現れる精神的・身体的な不調の総称です。月経が始まると症状が軽快、あるいは消失する点が特徴です。


報告されている頻度は次の通りです。


  • PMSを経験する割合:

 生殖年齢にある女性の約70〜80%が、月経前に何らかの症状を感じています。


  • 生活に支障が出るレベル:

 そのうち、日常生活に支障をきたすほどの重症PMSは約5%前後と報告されています。


  • PMDD(重症型):

 強い抑うつや怒りの爆発を伴うPMDDは、女性の約3〜8%にみられます。


多くの女性が経験する現象であり、「我慢すべきもの」と考えてしまうと、仕事や人間関係への影響が大きくなる可能性があります。


2.なぜ起こる?原因と背景にある婦人科疾患

PMSの正確な原因は完全には解明されていませんが、排卵後にエストロゲンとプロゲステロンが急激に変動することが、脳内の神経伝達物質(特にセロトニン)に影響することが主な要因と考えられています。


また、以下の婦人科疾患が背景にあり、症状を増幅させている場合もあります。


  • 子宮内膜症:強い月経痛や慢性的な痛みによるストレス

  • 子宮筋腫:過多月経による貧血が、倦怠感やイライラの原因になることがあります


3.検査と診断:客観的な「記録」が鍵になります

PMSでは血液検査に明らかな異常が出ないことが多く、診断には症状の記録が重要です。


米国産科婦人科学会(ACOG)の診断基準では、

「過去3周期において、月経前の5日間に特定の精神症状や身体症状が認められること」

が参考にされています。


  • 基礎体温の測定

  • 症状日記(いつ、どんな症状が出たか)


をつけることで、症状が排卵後の高温期に一致しているかを確認できます。


4.PMSを改善するための治療法

PMSやPMDDには、いくつかの治療選択肢があります。


低用量ピル(LEP)

排卵を抑え、ホルモン変動を小さくすることで、精神症状と身体症状の両方の改善が期待できます。

ドロスピレノン含有製剤(ヤーズなど)は、PMDDに対する有効性が示されています。


抗うつ薬(SSRI)

セロトニンの働きを調整し、精神症状が強い場合に用いられます。

症状のある期間のみ服用する「間欠投与」が行われることもあります。


漢方薬

加味逍遙散などが、体質に合わせて用いられます。


5.メンタル疾患との鑑別:それは本当にPMSでしょうか

PMSのように見えても、背景にうつ病や不安障害などがあり、月経前に悪化しているだけのケース(月経前増悪:PME)もあります。


  • 月経後も抑うつや不安が続く

  • 常に気分が沈んでいる


といった場合は、婦人科だけでなく精神科・心療内科での評価が重要です。

正確な診断が、適切な治療につながります。


6.自分でできるセルフケアと予防法

食事の工夫

  • 血糖値を安定させるため、低GI食品を意識

  • カルシウム、ビタミンB6、マグネシウムを十分に摂取

  • 月経前はカフェインやアルコールを控えめに


運動と睡眠

  • 週に3回、30分程度の有酸素運動

  • 十分な睡眠時間の確保


まとめ:受診を検討したいサイン

次のような場合は、一度医療機関への相談を検討してください。


  • 月経前に仕事のミスや対人トラブルが増える

  • 「消えたい」と感じるほど気分が落ち込む

  • 家事や育児に支障が出る

  • 市販薬やサプリで改善しない

※月経が始まっても強い抑うつが続く場合は、精神科・心療内科の受診も考慮されます。


結び

PMSは「気のせい」や「性格の問題」ではなく、医学的に説明できる状態です。

適切な治療とセルフケアによって、症状はコントロール可能です。


一人で抱え込まず、婦人科や専門家と相談しながら、

ホルモンの波とうまく付き合い、自分らしい生活とキャリアを守っていきましょう。

 
 
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