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宗田聡のやさしい産婦人科ブログ

ホルモン補充療法(HRT):更年期女性に本当に必要?リスクと効果

  • 1月6日
  • 読了時間: 4分

はじめに

40代後半から50代にかけて、多くの女性が経験するのが更年期症状です。ホットフラッシュ(ほてり・発汗)、不眠、気分の落ち込み、関節痛など、症状は人によって異なり、その強さもさまざまです。厚生労働省の調査によれば、日本人女性の約50〜60%が更年期に何らかの不調を自覚しているとされています。

その治療の中心にあるのがホルモン補充療法(HRT: Hormone Replacement Therapy)です。欧米では一般的に行われていますが、日本では「乳がんや血栓のリスクが怖い」と不安を抱く方も少なくありません。本記事では、HRTの基本原理、効果と副作用、適応となる女性や注意点について、最新のデータを踏まえて解説します。


更年期に起こる体の変化

女性は閉経前後に卵巣機能が急激に低下し、エストロゲンの分泌が減少します。日本人女性の閉経の平均年齢は50.5歳で、閉経期を中心とする45〜55歳にさまざまな症状が出やすくなります。エストロゲンが不足すると、自律神経の乱れによりホットフラッシュや不眠が起こりやすくなり、骨や血管、脂質代謝にも影響します。


HRTの基本

HRTは、不足した女性ホルモン(主にエストロゲン)を外から補う治療法です。投与方法には飲み薬、貼付薬、塗布薬、膣剤などがあり、子宮がある女性では子宮体がん予防のため黄体ホルモンを併用します。単に症状を和らげるだけでなく、骨粗鬆症の予防や動脈硬化リスクの低下も期待されます。


効果とリスク

効果

HRTの主な効果

・更年期症状の改善:ほてりや発汗、不眠、気分変動といった症状が70〜80%の女性で軽快

・骨粗鬆症予防:エストロゲンが骨吸収を抑制するため、HRTを5年以上継続した場合、骨折リスクが30〜40%低下

・心血管疾患の予防:閉経直後にHRTを開始すると血管内皮機能の改善が期待でき、心血管疾患の一次予防につながる可能性


リスク

HRTの主なリスク

・乳がんリスク:エストロゲンと黄体ホルモンを併用したHRTを5年以上続けた場合、乳がん発症リスクが約1.2倍に上昇(ただし閉経直後から短期間使用する場合にはリスク増加は小さい)

・子宮体がんリスク:エストロゲンを単独で投与すると子宮体がんのリスクが2〜3倍に上がるが、黄体ホルモンを併用すれば抑制可能

・血栓症リスク:経口薬で1.5〜2倍に増えるとされるが、貼付薬や塗布薬ではリスクが低い


HRTが適する人・適さない人

適応となる女性

・更年期症状が強く日常生活に支障がある女性

・閉経後に骨密度が低下している女性

・閉経から5年以内に開始できる女性


慎重な検討が必要な女性

・乳がんや子宮体がんの既往がある人

・重度の肝障害や血栓症の既往がある人

・未治療の高血圧や糖尿病を持つ人

このような場合、HRT以外の治療(漢方薬や非ホルモン系薬剤)が選択されます。


HRT導入時の流れ

HRTを始める前には、乳がん検診や子宮がん検診、血圧や肝機能、脂質、凝固系のチェックを受ける必要があります。投与方法は経口薬、貼付薬、塗布薬、膣剤などから症状や体質に応じて選びます。

導入後は6か月〜1年ごとに婦人科でフォローアップを受け、副作用の有無を確認します。乳がん検診は1〜2年に1回が推奨されています。


婦人科受診の目安

更年期症状が生活の質を下げていると感じるとき、また骨粗鬆症や心血管疾患のリスクが気になるときは婦人科に相談してください。HRTが適しているかどうかは、既往歴や検査結果に基づいて医師が判断します。「リスクが怖い」と感じる場合も、貼付薬などリスクを抑える選択肢がありますので、医師と一緒に安心できる方法を探すことが大切です。


まとめ

ホルモン補充療法(HRT)は、更年期の不快な症状を和らげ、骨粗鬆症や動脈硬化の予防効果も期待できる治療法です。症状改善率は70〜80%、骨折リスクは30〜40%減少といったエビデンスが示されています。

一方で、乳がんリスクは約1.2倍、子宮体がんリスクはエストロゲン単独投与で2〜3倍(黄体ホルモン併用で抑制可能)、血栓症リスクは経口薬で1.5〜2倍といったリスクも伴います。

HRTは「誰にでも必要な治療」ではなく、必要な人に、適切に行うことが重要です。もし更年期の不調で日常生活に支障を感じるなら、まずは婦人科で相談し、自分に合った治療を一緒に考えてみてください。

 
 
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