子宮の教科書 第四十七話
「漢方薬だったら安心!」の罠
よく勘違いされるのですが、漢方薬なら副作用もなくて安心!と思っている方も少なくないのですが、漢方薬にも副作用はあります。
ただ、一般的にいわれるように、確かに大きな副作用は少ないでしょう。
しかし、長期間ずっと飲み続けるような場合や、並行輸入などで個人的に外国から手に入れて使う場合には、注意が必要です。
そういった漢方薬は、副作用が強く出やすいものを使用していることがありますから、ちゃんと専門の方にアドバイスをうけるほうがいいでしょう。
漢方薬とは、ロキソニンなどの痛み止めや、風邪の時に飲む抗生剤のような一成分だけの薬ではなく、何種類もの生薬が少しずつ入っている総合薬のようなものです。
決して強い薬ではないけれど、いろいろなものに効果が出やすいのが特徴です。
ですから、生理痛のほかに、生理不順やむくみ、便秘、ちょっとイライラもする…などといったいくつかの症状があるとき、漢方薬を飲めば、すぐにそれらの症状が改善されることがあります。これが漢方薬のメリットです。
デメリットは、効き目に個人差が大きいことです。
よく「友だちがむくみが引いてよかったといっていたので、私にもあの漢方薬を出してください」などと来る方がいますが、必ずしも同じように効くとは限りません。
難しい話は漢方の専門書にゆずるとして、たとえば、すごくやせた方と、脂ぎった恰幅のいい女性とでは、同じ症状でも使う漢方薬が違います。
つまり、「あの人が効いたから私も」というのは、本来ありません。
ちなみに、僕のクリニックや日本の多くの病医院で出される漢方薬は、正確には「エキス剤」といって、製薬メーカーが成分を抽出してフリーズドライのようにして飲みやすくしたもので、保険もききます。
一方、漢方薬局や漢方専門外来で出される生薬は、自分で煎じて飲む必要があるので、少し手間暇がかかり、保険がきかず、自費で払わなければならないので高価です。
たとえるなら、インスタントコーヒーか、コーヒー豆を焙煎してドリップし、ゆっくり入れるコーヒー専門店か、の違いです。
それぞれのよさがあるので、個々の状況に応じて使い分ければいいのではないのでしょうか。
著者:宗田 聡医師(広尾レディース院長)
引用:31歳からの子宮の教科書(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン) https://www.amazon.co.jp/dp/4799312499