子宮内膜症:最新治療と不妊予防のためにできること
- レディース 広尾
- 4 日前
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はじめに
「生理のたびに強い痛みがある」「年齢とともに痛みが増してきた」と感じる女性の中には、子宮内膜症が隠れていることがあります。子宮内膜症は女性の10人に1人が経験するとされる代表的な婦人科疾患であり、不妊の原因となることも少なくありません。近年は治療法が進歩し、痛みをやわらげながら将来の妊娠を考えた選択ができるようになっています。この記事では、子宮内膜症の原因、不妊との関連、最新の治療、そして生活習慣や早期発見のポイントについて解説します。
子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは、本来子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所に発生する病気です。月経周期に合わせて出血や炎症を繰り返すことで、慢性的な骨盤痛や不妊を引き起こします。原因は完全には解明されていませんが、もっとも有力な説として「逆行性月経説」があります。これは、月経血が卵管を通じて腹腔内に逆流し、子宮内膜様組織が着床・増殖すると考えるものです。
さらに免疫機能や遺伝的要因も関わるとされ、母や姉妹に子宮内膜症がある女性では発症リスクが高まることが知られています。厚生労働省の難病情報センターによると、日本の女性の約10%が子宮内膜症に罹患していると推定され、特に20代後半から40代の女性に多く見られます。
不妊との関連性
子宮内膜症は強い月経痛の原因となるだけでなく、不妊の背景に潜んでいることも少なくありません。国立成育医療研究センターのデータでは、不妊症の女性の25〜50%に子宮内膜症が合併しているとされています。
子宮内膜症が妊娠に与える影響
・卵管の癒着や閉塞による卵子と精子の出会いの妨げ
・卵巣機能の低下による卵子の質や数の減少
・子宮内膜の着床能の低下
特に中等度から重度の症例では妊娠率が明らかに低下することが報告されており、早めの治療介入が重要です。
検査と診断
診断には超音波検査やMRIが広く用いられ、必要に応じて腹腔鏡による直接確認が行われます。超音波で「チョコレート嚢胞」と呼ばれる卵巣嚢胞が見つかることもあり、これは子宮内膜症の代表的な所見のひとつです。症状が強い場合や妊娠希望がある場合には、診断を兼ねて治療的腹腔鏡手術を行うこともあります。
最新薬物・外科治療
治療は大きく薬物療法と外科療法に分けられます。
薬物療法
・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤):月経をコントロールしながら痛みを軽減できます
・プロゲスチン製剤(ジエノゲストなど):妊娠を希望しない女性に対して、子宮内膜症病変の進行を抑えるため広く用いられています
・GnRHアゴニストやアンタゴニスト:卵巣機能を一時的に抑制し、エストロゲンを低下させることで症状を改善しますが、更年期様症状や骨量減少に注意が必要です
外科療法
腹腔鏡手術が主流で、病変部や卵巣チョコレート嚢胞の切除が行われます。妊娠希望がある場合は卵巣機能をできる限り温存する工夫が取られます。手術後は再発のリスクがあるため、薬物療法を組み合わせて行うことが推奨されています。
体外受精での妊娠率
日本産科婦人科学会の統計によると、子宮内膜症を合併する不妊症例で体外受精を行った場合、妊娠率はおよそ20〜30%と報告されており、重症度や年齢によって結果が左右されることが示されています。
生活習慣・セルフケア
子宮内膜症は完全に予防できる病気ではありませんが、生活習慣の工夫によって症状の悪化を防いだり、QOLを改善することは可能です。規則正しい生活リズムを心がけ、睡眠不足や強いストレスを避けることはホルモンバランスの安定につながります。食生活では、抗炎症作用があるとされるオメガ3脂肪酸を含む青魚や、ビタミンDの摂取を意識することが有効とされています。また、軽い有酸素運動やストレッチは血流改善やストレス軽減に役立ちます。
婦人科受診の目安
「強い生理痛は当たり前」と思い込む方も多いですが、実際には早期受診が妊娠の可能性を守る大切な一歩です。鎮痛薬が効かないほどの強い月経痛や、1年以上妊娠に至らない場合には、早めに婦人科での検査を受けることが望まれます。
まとめ
子宮内膜症は女性の約10%に見られる代表的な疾患であり、不妊症の女性の25〜50%に合併しています。薬物療法や外科療法の進歩により、症状を抑えながら妊娠希望を考慮した治療が可能になっています。生活習慣の工夫や早期発見も、不妊予防と生活の質の維持に重要です。強い月経痛や不妊で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まず婦人科に相談してみてください。あなたのライフステージに合わせた治療法を一緒に考えてくれる医師が必ずいます。


