子宮の教科書 第七十八話
年齢が上がれば上がるほど、初期流産の確率が上がっていく
この初期流産は、年齢とともに起きる確率が上がってきます。
流産には、いろいろな種類があります。
まず、「切迫流産」は、少し出血はしますが、子宮頚管は閉じたままなので、再び正常な妊娠の状態に戻る可能性がある状態です。
切迫流産になっても、そのまま妊娠を続け、無事に出産している方もたくさんいます。ただし、いつもより行動に注意が必要です。そして「進行性流産」になってしまうと、出血が多く、切迫流産と異なり子宮頚管が開いてしまうので、本当に流産してしまう率が高くなります。
「完全流産」は、赤ちゃんとともに子宮の中の組織すべてが完全に出てしまった状態。すべて出てしまっているため、流産手術も必要ありません。
「不全流産」は、完全流産の逆で、子宮の中の組織が完全に出ず、子宮の中にいろいろなものが残ってしまい、出血や腹痛がひどくなります。流産手術も必要です。
そして「稽留流産」は、胎嚢が大きくなっていなかったり心拍が止まってしまった状態。出血やお腹の痛みといった症状がほとんどないため、診察にいらして、超音波検査で発覚することがたくさんあります。
初期流産をする確率は、35歳だと20%、5人に1人になります。40歳になると30%、3人に1人です。45歳になると一気に確率が上がり、80%が流産してしまいます。
ですから、45歳の方は、妊娠するのも大変ですが、初期の80%の流産を逃れて、順調に赤ちゃん大きくなって出産するまで、さらに大変になります。
ただし、逆に、40歳を過ぎて妊娠し、初期流産もまぬがれて元気にお腹の中で育っている赤ちゃんは、ある意味、本当に元気だといってもよいでしょう。
われわれ人間も生きものですから、受精から妊娠にいたるまでに、さまざまなセレクション(選択)がかかります。そのセレクションをすり抜けて行き抜き、元気に育っている子は、おおむね元気といえるでしょう。もちろん、ダウン症や心臓の奇形などは、実際に産まれてみなければわかりません。こういったことのすべてが、自然の摂理なんですね。
20代、30代前半、30代後半、40代前半、40代後半と、時間がたつにつれてリスクは高まっていきます。下手したら、1年単位でリスクはまったく違ってきます。そのことを、今から十分に留めておきましょう。
著者:宗田 聡医師(広尾レディース院長)
引用:31歳からの子宮の教科書(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)