2023年4月3日

子宮の教科書 第十五話

最終更新: 2023年6月23日

毎月排卵と生理があることで病気になる⁉

では、お話を戻して、私たちの「今」を見つめてみましょう。 出産経験がなく、独身の35歳の女性である場合、もうすでに、20年間以上、休まず毎月排卵し、毎月生理が来ていることになります。

これは、われわれをつくった(⁉)神さまがいるとすれば、神さまにとっては想定外のできごとです。 まさか、妊娠も出産もないまま、こんなに何年も休まずに排卵し、生理がくることを想定して、女性の身体をつくっていないはずですから…。

実際、現代になって増えている子宮の病気の中には、排卵が何年も続くことによってリスクが高くなっていると思われるものもあります。

ガンという病気は、簡単にいえば、刺激を受けることによってなります。 たとえば食道ガン、喉頭ガンはタバコの刺激によるものが大きいですし、皮膚ガンは常に日光を浴びているという刺激がリスクを高めていることになります。

最初は、こういった刺激からのダメージを細胞に受けても、自分の力で治すことができるのですが、 加齢やもともと持っている治癒能力の強さ(遺伝的要因)によって、だんだん治すことができなくなっていき、それが蓄積してガンに向かっていきます。

20年の間休まず、毎月排卵が起きているということは、毎月卵巣が刺激を受けていることになりますから、当然卵巣ガンになるリスクが高くなります。

また、子宮筋腫や子宮内膜症になる危険もあります。

これは毎月生理があること、つまり女性ホルモンがずっと働き続けることで子宮内が活性化していることが原因で発症する病気です。

もちろん、昔もこういった子宮の病気になる人はいました。けれども、妊娠・出産している間に休ませていたのですね。

たとえば子宮内膜症になったとします。子宮内膜症は、子宮内膜と似た細胞が、子宮以外のあちこちにできて、生理のたびにそれが出血するという病気です。

しかし、子どもを産むと、生理がとまります。

2年も生理がこないということは、子宮の内膜細胞が働きません。

すると、本来あるべきところではないところにある細胞は使われていないため、 生理が止まっている間にだんだん萎縮して、なくなっていきます。

筋肉が使わなくなると弱くなるのと一緒です。

実際に治療としても、半年くらい生理を止めるような処置をすることがよくあります。

著者:宗田 聡医師(広尾レディース院長)

引用:31歳からの子宮の教科書(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン) https://www.amazon.co.jp/dp/4799312499

<第十四話へ  第十六話へ>