高齢出産や家族歴などで不安のある方に
胎児精密検査のご案内

出産前にお腹の赤ちゃんが無事に育っているのか不安に思われている妊婦さんのお気持ちに応えるべく、当クリニックでは予約制で胎児超音波スクリーニング(胎児ドック)外来を設けています。
当院には海外に留学研究歴があり出生前診断専門の産婦人科専門医がおり、院長は臨床遺伝学認定医・指導医の資格も有しております。
検査のみ行うのではなく、検査前や検査後のカウンセリングも含め、患者さんのお気持ちにも配慮した総合的な対応を行わせていただきます。
また、他院で妊婦健診をしている方でも受ける事が可能です。
費用 | 胎児スクリーニング:49,500円(税込)/回 (別途自費初診料がかかります) |
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胎児超音波スクリーニングってどんな検査?

胎児超音波スクリーニングは、超音波診断装置(エコー)を使用して赤ちゃん(胎児)の発育を見たり、赤ちゃんの形態的な異常、胎盤・へその緒の異常がないか調べることにより、生まれる前と生まれた後の赤ちゃんの管理・治療を適切に行うことを目的にしています。
最近では妊娠初期に「マーカー」と呼ばれるサインをいくつかチェックして、胎児が染色体異常や心奇形などのリスクが高くないかどうかみる「初期胎児ドック」も行なわれるようになってきました。
当クリニックでは、現在(1)初期胎児ドック、(2)胎児スクリーニング中期、の2つに対応させていただいております。
初期胎児ドック(妊娠12週〜13週)

初期の胎児ドックは、主にダウン症などの染色体異常の可能性をみるリスクチェックの検査です。超音波検査でいくつかのマーカーをチェック、測定して、特別なプログラムを使用してリスク計算をだします。
結果レポートの例はこちらです。
胎児スクリーニング中期(妊娠20〜30週)
*25週前後の頃が最も見やすいとされています
胎児スクリーニング中期では、主に胎児外表奇形といった目で分かるような大きな身体の異常をチェックする検査として利用されています。
はじめに、胎児の推定体重の計測と羊水量を確認します。
次に、以下の基本項目を観察します。
頭部 | 大脳・小脳・脳室(脳内部の脳脊髄液で満たされた部分)・脈絡叢(脳室内で血管が発達した部分) |
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顔面 | 鼻骨・口唇・眼球 |
心臓 | 心臓の軸・4つの部屋・大血管の走行 |
胸部 | 肺・胸水 |
腹部 | 胃泡・肝臓・腸管・腎臓・膀胱 |
背骨 | 脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙骨) |
四肢 | 左右の手足 |
臍帯(へその緒) | 血管の数(3本)・胎盤付着部位 |
性別 | 男の子や女の子か |
最近では超音波検査技術の向上により、かなり多くの胎児の異常が、生まれる前に分かるようになりました。検査時期は妊娠中期の妊娠20週頃〜30週頃で、この時期はお腹の中の赤ちゃんの各臓器が観察しやすく、また異常が見出された場合にも、対応可能な病院と相談したり、出生後の治療を考慮した分娩方法を準備することができます。
*お腹の赤ちゃんの写真や立体に見える3D、動きも見える4Dなど3D/4Dエコーのみをご希望の方は、通常の3D/4Dエコー検査でご予約お申し込みください。通常の3D/4Dエコー検査では、原則として胎児の性別診断や異常診断などは行なっておりません。
*3D/4Dエコーはコンピュータによって合成されたCG(コンピュータグラフィック)一種ですので、胎児の精密検査に必ずしも適切な画像が見られるのではありません。むしろ、両親の安心や楽しみのために利用されている画像です。
検査を受けるのは選択肢の一つです
妊娠・出産には、人によって差はありますがリスクが伴います。
一般的に大きな奇形を持って産まれてくる赤ちゃんは3〜5%で、その多くは特に問題のなかったお母さんから産まれてきます。
病気の中には、産まれてからすぐに治療してあげたほうが良いものもあり、お腹の中にいるうちに見つかっていれば、産まれてからの治療やサポート体制を事前に整えた上で安心してお産ができます。
胎児超音波スクリーニング(胎児ドック)は必ず必要な検査ではありませんが、何よりご両親が生まれてくる赤ちゃんに対して、前もってお気持ちの準備をしておきたい時に受けていただきたいと考えています。
胎児超音波検査の注意事項
- 赤ちゃんの向き、お母さんの体型(肥満)、胎動、羊水量によっては、診断率が悪くなるためすべて確認できない場合があります。
- 胎児超音波スクリーニングを行っても、産まれてくる赤ちゃんのすべての異常を診断できるわけではございません。
- 初期胎児ドックでは、直接赤ちゃんの異常を見つけるような検査ではなく、あくまでも「マーカー」のチェックにより、そのご特殊なアルゴリズムと計算によって求められる「確率(リスク)」が分かるのみです。
状況によっては、その後の確認検査として羊水検査を受ける方もでてきますが、必ず一度は遺伝カウンセリング外来(別予約)を受けていただきます。 - 異常が疑われた場合は、後日遺伝カウンセリングを受けていただきます。
- 保険証が使えないため、すべて自費での診療になります。
【補足説明】
*宋美玄先生のブログより抜粋です。
NTとは
NTは赤ちゃんの首の後ろに見える黒いスペースのことですが、これはリンパの流れでこの時期の赤ちゃん全員にあります。「浮腫」という日本語訳は誤解を招き適切ではないです。このスペースの分厚さの程度によっては問題になることがあるということです。
リスクの指標となるものをマーカーと呼んでいますが、マーカーが見られる(=陽性)ということと異常・病気はイコールではありません。NTの場合、100人の赤ちゃんをNTの厚さ順に並べて最も分厚い赤ちゃん5人(つまり95パーセンタイル:CRL45mmで2.1mm、84mmで2.7mm)を羊水・絨毛検査すると、全ダウン症児の75%が発見できます。
NTは11週〜13週(10週〜14週と書かれているものもありますが10週や14週では往々にして不正確になり、赤ちゃんのCRL(頭からお尻までの長さ)が45〜84mmである11週〜13週がベストです)に測定されるべき超音波マーカーです。
NTはダウン症をはじめとした染色体異常だけではなく、染色体は正常だけど心臓などに異常をもつ赤ちゃんでも分厚くなることがあり、その指標としても使われます。繰り返しになりますが、NTが分厚い=異常ではないので、羊水検査をして染色体異常があるかないか確定診断をします。もし、染色体が正常だった場合には妊娠6カ月(中期胎児ドック)で赤ちゃんを詳しく超音波で見て、異常がないかチェックします。
初期胎児ドック
超音波検査によって以下のような項目を確認し、これをFMFより入手したソフトで数値化して、もともとの年齢に伴うリスク値とあわせて計算し、リスクを算出するというものです。
- NT (nuchal translucency) :
胎児の首の後ろの皮下の黒く抜けて見える部分を計測します。
ダウン症胎児の75〜80%は正常児の95%がそれ以下になる計測値よりも大きい値になります。
その他の染色体異常や心疾患、感染症などでも大きい値になることがあります。 - 胎児心拍数:
13トリソミーの85%で心拍数が早いことが知られています。 - 鼻骨:
鼻骨が見えない胎児は、以下のような頻度でみられます。
正常染色体の1-3%、ダウン症の60%、18 トリソミーの50%、13 トリソミーの40% - 静脈管の血流派形:
へその緒から心臓に流れてくる途中の血液の流れを観察します。
約4%の胎児に逆流派がみられ、これらは染色体異常、心奇形、胎児死亡と関連があります。
ただし、逆流がみられるうちの約80%は、問題のない胎児です。
正常染色体では3%、ダウン症の65%、18トリソミーの55%、13トリソミーの55%でみられる所見です。 - 三尖弁逆流:
心臓の右心室から右心房へと逆流する血流がないかを確認します。
正常染色体児の1%、ダウン症の55%、18 トリソミーの30%、13 トリソミーの30%にみられます。